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着ぐるみショーインサマー [昔の話]

夏の着ぐるみショーが地獄なのは、何度か書かせてもらいましたが
その中でも一番恐ろしいのは、何といっても脱水症状でしょう。

着ぐるみショーは基本的に、一日に2回の公演が一般的なんですが
夏休みの行楽地などは、結構3回とかやらなければなりません。
夏の日の1日3回はかなりきついんです。

ですから夏休みに入ると、脱水症状で倒れる人間が続出します。

死体かボロ雑巾のように引きずられて
会場から連れ出されて行く着ぐるみたちを、いったい何体目撃した事でしょう。
生気を完全に失った着ぐるみほど不気味なモノはありません。

さっきまであんなに愛らしく動き回って風船を配っていたウサギさんが
ズルズルと地面の上を引きずられて行きます。
見てはいけないモノを見てしまったかのように、不安な表情の子供たち。

傍若無人に子供たちを蹴散らしていた、悪の組織の幹部怪人が
ヘロヘロになった挙げ句、ヒーローにやられたわけでもないのに
弧を描くようにキレイに舞台の下へ落下して行きました。
そこへ子供たちの容赦ない攻撃。
中の彼は、確か某国立大学の現役学生だったと思います。


そんな風に脱水症状に負けて、無様に散って行った仲間たちを見て
ボクはいつも心の中でつぶやいておりました。

「クスッ!人間、ああはなりたくないね。」

もともと大汗かきのボク。
水分の補給に関しては、人一倍気をつかっておりました。
ですから、脱水症状をおこすなんて失態は絶対ないと思っていたんです。

けれどソレは、ボクの身にも起こってしまったのです。


夏休みの遊園地で行われた「宇宙刑事ショー」。
ギャバン・シャリバン・シャイダーという3人の宇宙刑事が勢揃いする
人気のヒーローショーです。

ボクが演じたのには、隊長のギャバン。
3人の宇宙刑事の中で一番出番が少ないにも関わらず
最後に格好良く登場して、美味しいところを独り占めのとっても楽な役です。
多分それで油断してしまったんでしょうな。

ショーを無事終えて、握手会&写真撮影会を行っていた時の事です。

何だかいつもより息苦しいのです。
ギャバンのマスクを付けている事に耐えられません。
段々パニック状態に陥り始めたボクは
とにかくマスクの留め金を外して、少しでも空気を入れようと試みました。
しかし、もうろうとした状態ではうまくマスクの留め金を外す事が出来ません。
そこで後輩に身振り手振りでアピールします。
(ヒーローは子供たちの前では絶対しゃべってはいけません。)

すると後輩は、まるで太陽のごときスマイルでOKのサインを右手で作ると
ボクが何とか片方だけ外したマスクの留め金を
がっちりとしめ直してくれやがりました。

それで完全に心が折れてしまったボクは
そのままゆっくりとその場に崩れて行ったんです。

司会の女の子の声が耳鳴りのように聞こえています。

「ああっ!ギャバン隊長!どうしたの!?」

駆け寄る後輩たち。そして運び出されるギャバン隊長。


そう…
ボクは「…ああはなりたくないね。」と思っていたボロ雑巾となって
後輩たちの手で死体のように引きずられながら、会場から運び出されて行ったのであります。

子供たちの悲痛な「ギャバン!」「ギャバン隊長!」の叫び声の中を…


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